路上から | 青パパの無限増殖ver.187

路上から

サイゴンに居ても居なくても、常時飛び交うそこの情報の真偽を巡ってあらゆる糸を手繰る。たいていみんな同じ糸に絡み取られてい、結果として「確認」のような。
今年の正月、遠路はるばる兵庫から車で来てくれた、サイゴン時代の旧い友人に大まかな情報を伝えると。しばらく経って詳細を求めるメール。私の情報収拾は広く浅く、「詳細」は二の次。
遠く離れてもお世話になった方々の近況は気になる訳で。さしたる情報を持たない私は「小出し」に伝えつつ、「詳細」について調査を始めるしかない。
不思議とSカフェやファン・グー・ラオで飲んだ友人諸氏とは帰国後も交流が。一回ごとにスパンは長くなるものの過去の海原を浮かび上がらせる灯の如く続く。
廃墟を象徴する鉄柵を前に氷で薄められたビールを傾け、語り明かした無数の晩。
ある昼間、友人諸氏とタクシーで三区へ向かう途中、取り去られた鉄柵の跡に造られた無機質な公園を左手に見遣る。昔と同じ場所にいるはずなのにひどく「遠く」感じられる。
整然と敷き詰められたタイルからゆらゆら立ち上る蜃気楼。友人の呼ぶ声で我に返り、車内のエアコンで引いていく汗と共に胸が締め付けられる。路上は遠く…
松野 大介
路上ども