プールサイド小景 | 青パパの無限増殖ver.187

プールサイド小景

ムイネーの初日、イタリア料理店で食事を終え、徒歩でホテルに戻る。街灯の間隔は疎ら、海辺の砂がうっすらと覆う道を照らす光は脆弱。
鮮やかな緑の生い茂るホテルの小路を抜けてコテージへ。正面に位置するプール、マリンブルーの水面が内側のライトで浮かび上がる。
ひっそりと静まり、人影も消え闇に包まれた砂浜からさざ波の囁き。遥か沖の彼方から雷鳴の震え。
水着に着替えた二人を追って、トニックウォーターの滑らかな輝きを帯びたプールに飛び込み。揺れる水面に呼応して飛沫が。マリンブルーのライトに溶けて、頬に撥ねてきて。
二人のお喋りがとぎれとぎれに。一人水をかき、潜り、戯れている、と。

20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
レス・ザン・ゼロ

」のワンシーン、ヤクの売人のジェイムス・スペーダーがパーティーの催されているプールサイドに現れ、大学生の主人公に話し掛ける。
似つかわしくないふてぶてしさを纏った彼の吐いた台詞は?
髪に落ちる滴、沈黙を保つ灰色の雲の隙間より、もう一度大きく吠え、震えた瞬間、プールサイドが濡れ、闇に浸食されていく。
エリスの空虚さ…