疲れたら頭を軽くする | 青パパの無限増殖ver.187

疲れたら頭を軽くする

海外で最後に理髪店へ髪を切ったのは、二年前のバンコク。伊勢丹からプラトゥーナーム、鉄道の線路を越えて、傍には高速道路の架橋が幾重も聳える。
交差点ではジャンバー姿のバイクタクシー・ドライバーが沿いの奥に向かう客待ちをしている。架橋下の荒涼とした空間は痩せこけ皮膚病を患った野良犬が闊歩するくらいで、時折真上から轟音が堕ちて来て文明の片隅にいるのを実感する。
舗道から一歩降りてガラスのドアを押すと、タイ語で書かれた料金表とファッション誌から切り抜かれた男性アイドルの写真がくすんだ白い壁を埋め尽くす。年季の入った椅子と対照的に清潔なタオルで首筋を巻かれ、散髪が始まる。
「横は短く、上は少し、イメージとしは笑顔の眩しい好青年?」適当な写真を指差し、簡潔なタイ語で意思を伝える。
数回のバンコク中期滞在時もシャンプーなしで80バーツのこの店で。徒歩5分のマンション住い。沈没者の仮の宿り。
出来映えは…自分で切ったんですか?行きつけのスピリッツの皆さん、ごめんなさい。

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髪結いの亭主