旅の心得? | 青パパの無限増殖ver.187

旅の心得?

「旅行者は旅行者らしく」とSちゃんが敬愛するMさんは説いたようで。当人は無自覚のまま、トートロジー(同語反復)は意味の希薄さを増幅させるだけで、記号性すら有しない、などと遅れてきたニューアカみたいな言い訳に終始する。
その言葉を鏡の前で復誦していただきたい。「豊饒の海」の生まれ変わりのしるしである黒子を探す代わりに。
とかく帰国してから後の旅行は、放蕩を尽くした過去を振り返り、贖う内容に近く。新しい国への改まった認識の発見、現地の方との触れ合いから生まれる温かさ、異なる文化への純粋な驚き、とは対極にある。緩やかな変貌を遂げる国々で依然として曖昧な態度でその国の言葉を話し、通過する傍観者。
茶化して「罰ゲーム」と称するのは、街角の片隅から自分の影に覗かれている罰の悪さが抜け切らない訳で。まるで村上春樹の「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」、旅先のホテルで上巻だけ読み直したのはいつのこと…

村上 春樹
世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド