シネフィルになりそこねた男 | 青パパの無限増殖ver.187

シネフィルになりそこねた男

朝から降り続く氷雨をくぐり抜け、約束の「ランド・オブ・プレンティ」を観に有楽町へ。朝方までカラオケに興じていた寝不足と二日酔いに支配された身体に鞭打って。
映画館に再び足を運ぶようになったのはここ半年くらいのこと。意外と映画の嗜好に変化は見られない。保守的なのか青臭い懐古趣味と言おうか。
ラナと伯父が降り立つL.A郊外の砂漠に「パリ、テキサス」を重ねたり、超私的自衛隊バンでの旅に「都会のアリス」を思い浮かべたり。高層ビルを見上げるシーンから始まると、俯瞰のシーンが多い「ベルリン天使の詩」や「時の翼に乗って」とは異なり、アメリカには天使がいないのだ、と慨嘆し。音楽の挿入の巧妙さに舌を巻き。加工された映像、自然のまなざしの差異に戸惑い。見えない声に耳を傾ける存在を見出だし、一人喜びに浸る。
隣の席のMちゃんにはお節介な蘊蓄だったかも。映画から「意味」を汲み取ろうとする病に憑かれた愚かな男の戯言と聞き流して。

東北新社
ヴィム・ヴェンダース コレクション